Phenotype Pd

分野

Ceramics

制作年

2024

解説

この作品は、陶磁器を基盤に、自身で調合した九谷の上絵具と、貴金属であるパラジウム液・プラチナ液を用いて制作されている。

タイトルの「Phenotype」は、生物学における「表現型」を意味し、遺伝子情報が環境との相互作用によって具体的な形態や性質として現れることを指す。作家は分子生物学の研究背景を持ち、ここでは生命の「表現型」を陶土と釉薬の物質性を通して可視化している。

立方体の人工的な形態は、科学の実験試料やサンプルを思わせるが、その表面には焼成による亀裂や断層が走り、物質の不可避な偶然性が刻まれている。そこに九谷の上絵による細胞紋様が拡散し、パラジウムやプラチナの金属的な発色が共鳴することで、有機的な生命現象と無機的な物質実験とが交錯する場を創り出している。

《Phenotype Pd》は、科学的観察の眼差しと陶芸的実践を融合させ、生命のかたちを「陶磁」という伝統素材に転写することを試みたシリーズである。

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